障害者施設で虐待 元職員、傷害罪で在宅起訴(福島)

南相馬の障害者施設で虐待 元職員、傷害罪で在宅起訴

2024年9月4日
福島民友新聞 引用

福島県南相馬市原町区の障害者支援施設「原町共生授産園」で、当時職員だった男が40代男性入所者に暴行を加え、けがを負わせる虐待行為をしていたことが3日、捜査関係者らへの取材で分かった。地検相馬支部は同日までに傷害罪でいわき市小名浜字芳浜、元職員、会社員の男(24)を在宅起訴。地裁相馬支部(岩田真吾裁判官)で同日、初公判が開かれ、被告は起訴内容を認め、検察側は懲役1年6月を求刑して即日結審した。

「暴行は常習的」 懲役1年6月求刑

起訴状によると、被告は今年3月17日午前2時半ごろ、施設内で男性入所者の左太ももを左足で蹴り、動脈の損傷など加療約4週間のけがを負わせた、としている。

検察側の冒頭陳述や証拠調べによると、被告は仕事の多忙さや上司との関係悪化、知的障害があった入所者とのやりとりにいら立ちを募らせ、22年4月ごろから月1回程度、男性の腹や背中を殴る暴力を振るっていたと指摘した。

その上で、事件当日は「着替えたい」と懇願する男性の太ももを全力で蹴り上げたとした。当日は退職を決めていた被告の最後の勤務日だった。

被告は県内の短大を卒業後、主に児童を対象とした障害者支援施設で勤務したが、児童への暴言などを理由に2021年4月に系列の原町共生授産園に異動していた。

被告人質問で被告は「自分の感情が抑えられず、一時の感情でけがを負わせて申し訳ない」と述べた。

検察は論告で、抵抗できず、逃げ出せない男性に対して「介助者という立場で一方的に暴行するなど卑劣極まりない」と指摘。その上で「暴行は常習的で犯意は極めて強固」とした。弁護側は施設から懲戒処分を受けているなどとし、執行猶予付きの判決を求めた。判決公判は20日午前11時半から。

施設長「把握できず」

原町共生授産園の施設長は取材に対し、被告への聞き取りで入所者への暴力が発覚するまで、長期的に虐待が行われていたことを把握できていなかったと説明した。

その上で「今後、家族に謝罪をしたい。業務内容の見直しや職員教育を行い、二度とこのようなことが起きないようにしたい」と述べた。

今回の事件を受け、県は今年春に同施設で立ち入り調査と書類調査をしており、内容を踏まえて処分を検討していく方針。南相馬市は今年3月21日に事件を把握し、4月中旬に県に報告したという。

被害者の母「被告が担当後、あざ」

被害者参加制度を利用して公判に出廷した男性入所者の母親は「もっと早く気付くことができなかったのか」と自問し、「命を預かる責任はなかったのか」と被告に問いかけた。

公判後、男性の母親と妹は報道陣の取材に応じ、障害のある児童に対する被告の暴言などを把握しながら、障害者に接する業務を続けさせた施設側に疑問を呈した。母親は「このまま、うやむやにしておきたくない」と述べ、民事提訴も視野に施設側の責任も追及する考えを示した。

母親らによると、男性は10年余り前に原町共生授産園に入所。月1回、南相馬市の自宅に戻っていた。被告が男性を担当してから、腕や脚にあざなどのけがを見つけるようになったといい、昨年9月には施設であごの骨を折った。家族はけがの原因について施設側に説明を求めたが、納得できる回答は得られなかったという。1、2年前からは、男性が自宅に戻った際に「(施設に)帰りたくない」と話すようになったという。家族が男性の体に触れようとすると、怖がったり、怒ったりしていたといい、妹は「今思えば、何かされて、怖いことがあったのかな」と話した。

男性は被告による暴行を受けて入院し、退院した2日後の今年4月14日、家族で花見に出かけた際に食べ物を喉に詰まらせ、死亡した。

「自分より弱い」障害者施設で職員が暴行 福島地裁相馬支部で初公判

2024年9月3日
毎日新聞 引用

福島県南相馬市の障害者施設「原町共生授産園」で入所者の40代男性を蹴って大けがをさせたとして、福島地検相馬支部が元職員を傷害罪で在宅起訴した。3日に福島地裁相馬支部(岩田真吾裁判官)で初公判があり、元職員が1年間以上にわたって習慣的に男性を蹴り、立件された暴力は退職前の最終出勤日に振るわれていたことが明らかになった。

在宅起訴されたのは、元職員の矢吹被告(24)=福島県いわき市。起訴状などによると、矢吹被告は3月17日午前2時半ごろ、施設で男性を蹴り、左足の付け根の血腫や太ももの動脈損傷などの大けがをさせたとしている。

「自分より立場の弱い人だったから」。矢吹被告は初公判で、言い返せない、やり返せない立場の男性へ繰り返し暴力を振るった経緯を述べた。

被告人質問などによると、保育士の資格を持つ矢吹被告は2020年春、社会福祉法人「福島県福祉事業協会」(田村市)が運営する障害児施設に就職。だが、幼児に「死ね」「バカ」などの暴言を浴びせ、21年春に原町共生授産園に異動させられた。

夜勤明けにそのまま日勤が続くなど「現場は人手不足で(労働環境が)厳しい」中でたまったストレスのはけ口が、担当することが多かった男性への暴力だった。勤務2年目から、自閉症やてんかんのある男性の腹や背中を蹴るなど、月1回ほどのペースで暴行に及んでいたという。

その後、23年度末での退職を決めた矢吹被告は最終出勤日の今年3月16日の夜勤(17日未明)、全力で男性の左太もも付近を蹴り、利き足の左足の靴のつま先が命中した。翌朝に別の職員が男性のけがを見つけ、男性は緊急入院した。矢吹被告は当初、施設側に「背中を押したらベッドにぶつかった」と説明をしたが、後に蹴ったことを認めたという。

男性の母親によると、男性は入院先の病院で「矢吹に殺される」などと口にした。男性の体力は落ち、今年4月に退院して家族と花見に行ったものの、食べ物をのどに詰まらせて亡くなった。

矢吹被告は法廷で「申し訳ありません」などと小さな声で謝罪。検察側が懲役1年6月を求刑し、弁護側が執行猶予付き判決を求め、即日結審した。判決は9月20日。